こんにちは。管理者ののぶおです。今回は冷麺についてお話しします。
冷麺とは名称の如く、冷たい麺料理ですが、
一般的に冷たいスープの中に麺が入った「물냉면[ムルレンミョン]」
辛い合わせ調味料を麺に絡めて混ぜ麺「비빔냉면[ビビmネンミョン]」の2種類あります。
冷たいスープの冷麺「물냉면[ムルレンミョン]」
冷たいスープの冷麺は平壌[ピョンヤン]を発祥とする冷麺です。
平壌出身の冷麺、「물냉면[ムルレンミョン]」の麺は、原料に蕎麦粉を練りこねた物を茹でて細く切った麺です。
「동치미국[トンチミクk]」(大根漬汁)、または牛肉でダシをとったスープを少し凍らせたものに麺を浸けたもので、一般的にキュウリの千切り、茹で卵などをトッピングします。
辛い混ぜ麺비빔냉면[ビビmネンミョン]
辛い混ぜ麺비빔냉면[ビビmネンミョン]は、平壌より北上したに場所にある咸興[ハmフンネン]を発祥とする冷麺です。
「비빔냉면[ビビmネンミョン]」は、トウモロコシ、さつまいものデンプンなどを練りこねた物を茹でて、細く切った麺です。
「물냉면[ムルレンミョン]」同様、キュウリの千切り、茹で卵などをトッピングしますが、ガンギエイの刺身をはじめ、刺身をトッピングしたものもあります。
刺身をトッピングした冷麺を「회냉면[フェネンミョン]」といいます。
冷麺の歴史
冷麺の麺によく用いられている蕎麦は、主に寒い地方で栽培されます。
蕎麦は夏に種まきをして2,3か月経つと収穫が可能で、草木が育ちにくい痩せた土地でもよく育つ穀物です。
昔、小麦は朝鮮半島の一部地域でのみでしか栽培できず、それも冬に種まきをして梅雨が来る前に収穫しなければならないので、供給量が多くなかったのです。そのため朝鮮時代の麺の主材料は、ほとんど蕎麦だったのです。
しかし、蕎麦には小麦粉に含まれているグルテン成分がないので、蕎麦粉は小麦粉のような生地を作ることが容易でなく、小麦粉を練りこねて生地を作るより数十倍の労力が必要でした。ようやく麺生地に仕上げても、石のように固く細い麺を作るのが容易でなかったのです。そのため、蕎麦麺を包丁で切ったものが多かったようです。
朝鮮半島北部では、厳寒の冬の時期に、歯が沁みるほど冷たいスープを冷麺にかけて食べることが、冷麺の醍醐味とされていました。
寒い時に冷たい物を食べて寒さを克服しようとすることを
イリョンチリョン(以冷治冷)
一方、暑い日に熱い物を食べて暑さを克服しようとすることを
イヨルチヨル(以熱治熱)と、いいます。
現在でも、このような風習が残っています。
しかし、寒い冬場の食べ物だった冷麺が、どうして夏場でも食べられるようになったのでしょうか。
その理由は氷にあります。
朝鮮時代ソウルをはじめとして、高位職官吏が駐在する地方の主要都市には‘石氷庫’という氷を保存するための施設がありました。冬場に凍った氷を削って地下に作った石氷庫に保管していたのです。
現在では地名として残っているソウル市内のトンビンゴ(東氷庫)と、ソビンゴ(西氷庫)は、朝鮮時代、王室で使う氷を保存しておくための倉庫の名称でした。石氷庫に保存された氷は、夏が近づいてくると、氷が少なくなり、氷を保管している氷庫の地面が見えはじめます。そのため、夏場に氷を入手できたのは、王と王の家族、ごく一部の高位職官吏しか手に入らなかったのです。
1913年4月に京釜線の列車の中で冷たい飲料を提供しようとして、現在のソウル龍山第1鉄道近郊に製氷工場が建てられました。
冬場に漢河の氷を削って、それを電気で溶けないように保管する製氷工場が出来たのです。
ソウルよりはるかに寒い平壌の大同江近郊にも1910年代後半、製氷工場が建てられました。そのおかげでソウルと平壌では夏場でも氷の塊を入手できるようになったのです。
その後、日本で発明された‘味の素’が、冷麺の出汁に使われるようになり、さらに冷麺は夏場の料理として人気を博します。
1970年代以前までは、平壌で誕生した牛骨スープに大根や白菜の漬け汁、味の素をブレンドした出汁に、麺を浸して食べる‘ムルレンミョン(물냉면)’が主流でした。
1970年代以降、スープの代わりに、辛いヤンニョムを麺に絡めて食べるまぜ麺、ビビムネンミョン(비빔냉면)が登場して、やがて全国各地に広まります。
1980年代以前まで、蕎麦に澱粉を加えて麺を作っていたようです。夏場の冷麺の麺がゴムのような食感であるため、冷麺を食べる前に必ずハサミを使って食べやすいサイズに切るようになったのです。
マクククス(막국수)とよばれる蕎麦粉を使った混ぜ麺があります。
2018年に冬季オリンピックが開催されたピョンチャン(平昌)は、高原地域のため韓国国内屈指の上質の蕎麦の生産地であり、マクククス(막국수)を出している飲食店が多く見られます。
日本では、兵庫県神戸市で平壌出身の創業者が、1939年に創業した「元祖平壌冷麺屋本店」が、日本で初めて平壌冷麺を提供したお店で有名です。
岩手県盛岡市、大分県別府市でも冷麺が有名ですが、こちらも朝鮮半島北部出身の人々による冷麺の製法、味が人々に親しまれ、現在ではご当地グルメとして定着しています。
参考文献
한복진, ≪우리 음식 백가지≫,현암사 1998.
주영하,≪음식을 공부합니다≫,(주)휴머니스출판그룹 2021.
普通の冷麺もいいですが、たまには辛い混ぜ麺もいかかでしょうか?
今回は冷麺の種類や歴史についてお話ししました。
またお会いしましょう。
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